建設業許可の重要な要件である常勤役員などの経営業務管理責任者と専任技術者の常勤性の確認資料について、まず常勤役員等の要件は次のとおりです。
2020年10月の建設業法改正により、経営業務管理責任者の要件が、常勤役員等の要件に変更になって、必要書類も変更されました。
- 2020年10月の建設業法改正点
- 常勤役員など(経営業務管理責任者)が会社に常勤していること
- 専任技術者が会社に常勤していること
建設業では「常勤」について、次のように定義されています。
- 本社、本店等において休日その他勤務を要しない日を除き一定の計画のもとに毎日所定の時間中、その職務に従事(テレワークを行う場合を含む。)している者
- 建築士事務所を管理する建築士、宅地建物取引業者の専任の宅地建物取引士等の他の法令で専任を要するものと重複する者は、専任を要する営業体及び場所が同一である場合を除き「常勤であるもの」には該当しない
つまり、「所定の時間中は職務に従事していること」「ちゃんと毎日通勤可能なこと」「ほかの専任が必要な業種の専任者でないこと」が基本となります。
特に「ちゃんと毎日通勤可能なこと」の部分として、大臣や都道府県によって運用が異なりますが「片道2時間」で運用されることが多いです。
常勤役員等の要件
- 建設業許可の要件として、常勤役員などのうちの一人が次のいずれかに該当すること
- 建設業について、5年以上経営業務を管理した経験を有する
- 建設業に関し委任を受け役員等に準ずる地位として、5年以上経営業務を管理した経験を有する
- 建設業に関し役員等に準ずる地位として、6年以上経営業務の管理責任者を補助する業務に従事した経験を有する
- 常勤役員等のうち一人が、次のいずれかに該当して直属かつ常勤の補佐者を置くこと
- 建設業の役員等の経験が2年以上あり、それに加え建設業の役員等又は建設業の財務管理、労務管理、業務管理について役員等に次ぐ職制上の地位の経験を3年以上有する
- 建設業の役員等の経験が2年以上あり、それに加え役員等の経験を3年以上有する
専任技術者の要件
- 建設業許可の要件として、専任技術者の要件は次のものがあります。
- 定められた国家資格を持っていること
- 指定学科を卒業し学歴に応じた実務経験があること
- 10年以上の実務経験があること
常勤性の確認資料
建設業許可の要件である経営業務管理責任者と専任技術者の常勤性の確認資料としては、次のようなものがあります。
経営業務管理責任者または専任技術者が、建設業者の本支店、営業所で常勤していることを証明するものとなります。
なお、常勤性は現在のほか、過去も確認されます。前職の各種資料は、在職中に、特に健康保険証だけでも写しを入手した方がいいです。
- 経営業務管理責任者
- 健康保険被保険者証
- 賃貸借契約書
- 公共料金の領収書
- 標準報酬決定通知書
- 通勤定期券
- 社員証
- 賃金台帳
- 業務報告書
- 専任技術者
- 健康保険被保険者証
- 賃貸借契約書
- 公共料金の領収書
- 標準報酬決定通知書
- 通勤定期券
- 社員証
- 出勤簿
- 賃金台帳
- 業務報告書
- 健康保険被保険者証(の写し)
- 建設業者に雇用されていることを証明するものとなります。健康保険被保険者証には、氏名、生年月日、住所、事業所名などが記載されています。
- 法人では健康保険加入が必須であることから、建設業許可申請では、ガイドラインに唯一明記されている確認資料です。(他の資料はすべて「準ずるもの」となります)
- この資料で会社に所属していることが明らかで、かつ営業所等に常勤可能が明らかなら、他の資料は原則不要です。
- 裏面に被保険者住所が記載されている場合は、表面だけでなく裏面もコピーが必要です。
- 「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律」(令和2年10月施行)に伴い、医療以外の用途に用いる場合は、「記号」「番号」「保険者番号」「QRコード」をマスキングすることが義務化されています(付箋で隠す、画像加工ソフトで塗りつぶすなどを行います)
- 国保組合の場合、保険証に社名が表示されません。その場合、国保組合の加入証明書もセットで必要になります。
- 後期高齢者の場合は、後期高齢者医療被保険者証をコピーして提出となります。
- 賃貸借契約書
- 賃貸借契約書は、建設業者の所在地に居住していることを証明するものとなります。賃貸借契約書には、氏名、住所、契約期間などが記載されています。
- 確認資料の一つとなる「登記されていないことの証明書」の住所は住民票の住所となるため、単身赴任等で住民票と異なる住所に住んでいる(法律用語でいうところの居所)の場合は必要になります。
- 公共料金の領収書
- 建設業者の所在地に居住していることを証明できます。氏名、住所、支払金額などが記載されています。
- 賃貸借契約書とセットになることが多いです。ちゃんと住んでいることを証明するために、電気と水道がセットの場合が多いかと思います。もちろん、メーターゼロではだめですよ。
- 標準報酬決定通知書
- 社会保険加入の場合、4~6月の給料をもとにその平均額を標準報酬として、社会保険料徴収のための根拠とします。
- 常勤性確認方法として、特に健康保険証に社名が記載されてない場合に写しの提出が必要になります。
- 最低賃金に満たない役員報酬や給料が標準報酬として計算された場合、許可が出ない可能性が高いです。(参考までに、経審の時に標準報酬決定通知書が必須となりますが、最賃未満の場合は技術者の対象外となる場合があります)
- 通勤定期
- 建設業者の所在地に通勤していることを証明できます。通勤定期には氏名、住所、有効期間などが記載されています。
- 主に遠距離在住者に求められることが多いかと思います。定期券は1回1回切符を買うより、一般的に3割前後割り引かれるので、金銭事情などよほどのことがなければ買うよねって話です。
- 公共交通機関を使用してない場合は、ETC履歴で代用になることがあります。
- 社員証
- 建設業者の従業員であることを証明するものとなります。
- 主に保険証が国保組合などで会社名が記載されてない場合、写しが必要になる可能性があります。
- 特に転職等で前職経験を追加する場合、コピーをとっておいた方がいいかもしれません。
- 出勤簿
- 建設業者に勤務していることを証明できます。出勤簿に氏名、出勤日、出勤時間などを記載しておきます。
- 常勤性を確認するための資料なので、ここまで提出指示が出てくると、ずいぶん疑われてる可能性がありますが…
- 賃金台帳
- 賃金の支払い状況を証明できます。賃金台帳に氏名、勤務日、勤務時間、給与などを記載しておきます。
- これも常勤性の確認のための資料となります。出勤簿と同様、滅多に提出指示が出ないと思いますが、指示が出たら用意しなければいけません。
これらの資料が、追加提出の資料を含めて、主に必要になる資料となります。
建設業許可は、経営管理責任者・専任技術者の契約能力の確認方法として「身分証明書」「登記されてないことの証明書」のダブルチェックが行われるように、常勤性についてもずいぶん疑い深いことを前提とした仕組みとなっています。
働き方改革で副業推進の話もありますが、建設業では他社から給料・報酬をもらうと、常勤性の疑いありで、許可されないか、かなりのダメ出し(追加資料提出)が出ます。極論、勤務時間外の副業も無理です。なんだか公務員みたいな話ですが。
また、専任技術者は技術者ですが特定の場合を除き現場に出れないので、定年退職後のOBなどの高齢者を配置することが多いかと思います。その際も、常勤を前提とした雇用や賃金支払いが求められます。
健康保険証があればOK!とはいえ、標準処理期間内に国・都道府県などの行政庁側で照会を行う前提です。そこで低賃金だと、追加資料が出る可能性が出ます。国策に賃金上昇もありますので、無闇な低賃金は許可が出ないくらいに考えた方が、いいのかもしれません。