特定建設業許可とは
特定建設業許可とは、発注者から直接請負った1件の工事について下請代金の額が4,000万円、建築一式工事の場合は6,000万円以上となる建設工事を施工する場合に必要となる許可です。
特定建設業許可が必要な場合は、元請けとして、直接発注者から工事を請け負う場合に、1件の請負工事について、下請け業者に工事を発注する合計金額が4,500万円以上、建築一式工事では7,000万円以上の場合となります。この場合以外では、一般建設業許可があれば金額の上限の制限なく請負うことが可能です。
なお、裏技的な話ですが、無許可が請け負える制限金額の500万円未満については、材料費も込みになりますが、一般建設業の下請発注では4500万円の中に含めないことができます。よって、下請発注の際、工事費と材料費を別々で伝票発行すると、特定建設業を保有している会社でも、現場に監理技術者の代わりに主任技術者でもよくなる場合があります。
特定許可は一般許可と比べて、施工金額が大きくなることがほとんどなので、許可要件が厳しくなっています。違いは、財産的要件と、専任技術者の資格要件です。
財産的要件は、以下の4つの指標をすべてクリアすることが必要です。
- 欠損額が資本金の20%を超過しない
- 申請資料や毎年提出する決算変更届(事業年度報告)では、財務諸表を提出します。
- この中の「貸借対照表の繰越利益剰余金が負である場合にその額が資本剰余金、利益準備金及び任意積立金の合計額を上回る額」を欠損額と定義します。このマイナス額が、資本金の20%を超えてはいけません。
- 任意積立金は、別途積立金のほか、資の本の部で個別に設定してる積立金も含みます。
- 自己株式・自己株式申込証拠金がない場合は、「株主資本」の額が資本金の額より20%超少ない場合とも言えます。つまり、自己株式のマイナス額はこの要件に含まれません。
- 流動比率が75%以上
- 流動比率は、財務分析で用いられる指標で、1年以内に現金化できる資産を流動資産、1年以内に返済が必要な負債を流動負債と呼びます。流動資産÷流動負債の数値を流動比率と呼びます。
- 建設業の経営分析では、一般に流動資産・流動負債から「未成工事支出金」(建設業会計用語で、一般的には仕掛品)「未成工事受入金」(同じく、一般的には前受金)を除外することが多いですが、建設業許可では控除せずに純粋な流動資産÷流動負債で計算されます。(ちなみに、一部の勘定科目を除外する方式は、かつての経審の経営状況分析指標の手法です)
- 流動比率が75%未満だと許可が出ないのは、流動負債が大きいために返済資金不足の可能性が高くなるためです。
- 資本金が2,000万円以上
- 自己資本が4,000万円以上
- 資本金はそのままなので説明省略として、自己資本は純資産合計の額を使います。
- よって、会社新設で特定建設業の申請をしたい場合、必ず4000万円以上の資本金設定の必要があります。
4つの要件は、直近の決算報告(会社新設の場合は創業時の財務諸表)によって判断されます。
専任技術者は、一般建設業より高い条件が求められます。
- 国家資格(施工管理技士・建築士)の場合は、2級ではなく1級資格が必要(技術士は1級相当として扱われます)
- 実務経験の場合、主任技術者としての要件の他、元請で契約した、4500万円以上の工事で2年以上指導監督的実務経験(現場監督等)があることが必要
- ただし、指定建設業と呼ばれる、「土木一式」「建築一式」「電気」「管」「鋼構造物」「舗装」「造園」は、実務経験ではなく1級施工管理技士・1級建築士・技術士に限定されています。
- この条件を満たすと指定建設業以外では監理技術者になれるため、監理技術者証を添付書類とすることができます。
一般建設業許可から特定建設業許可に変更
申請書類作成
申請書類は、国土交通省のホームページなどからダウンロードすることができます。
特定建設業への変更(その逆に一般建設業へのも含む)は、般特新規と呼ばれます。
すべての許可業種を特定に変更(その逆も含む)は、新規申請と書類は同一になります。
- 特定建設業許可への変更の申請書類には、次のようなものがあります。
- 建設業許可申請書
- 経営業務管理責任者の経歴書
- 専任技術者の経歴書
- 財産的基礎の証明書
- 技術力の証明書
申請書類は、当該の地方整備局や都道府県知事に提出します。
提出方法は、郵送または窓口提出となります。
- 特定建設業許可への変更の審査
- 最寄りの地方整備局または都道府県知事で審査
- 審査期間は、知事は30~45日程度、大臣は90~120日程度
- 特定建設業許可の交付
- 許可基準が認められれば、許可が交付されます。