専任技術者の要件は、資格で満たすことができればよいのですが、資格がない場合には、事業主などの実務経験によって、専任技術者の要件を満たさなければなりません。
許可取得予定の業種に対する指定学科を卒業している場合は、実務経験の短縮が可能ですが、原則としては10年の実務経験が求められています。
実務経験として認められるのは、許可を取得しようとする建設工事に関係する技術上のすべての職務経験となります。
建設工事の施工を指揮や監督した経験、および建設工事の施工に携わった経験など、請負人での経験に限らず、建設工事の注文者側で設計に従事した経験や現場監督技術者として監督に従事した経験も含まれています。
ただし、工事現場の雑務や事務仕事の経験は含まれません。
同じ人が実務経験によって、複数の業種の専任技術者になろうとする場合には、実務経験の期間は重複できないので、各々の業種で10年ずつで、20年の実務経験期間が必要となります。
建設業許可取得の実務経験を証明する方法は、次の3つがあります。
工事請負契約書
工事請負契約書は、建設工事の請負契約を締結したことを証明する書類です。
契約書には、工事名、工事内容、工期、工事金額、請負代金、契約日などの工事の概要が記載されています。
注文書・請書
注文書・請書は、建設工事の請負契約を締結する時に、請負者が発行する書類です。
注文書には、工事名、工事内容、工期、工事金額、発注日などの工事の概要が記載されています。
請書には、注文書の内容を請負人が承諾したことが記載されています。
請求書・入金通帳
請求書・入金通帳は、工事代金の請求と支払いを証明する書類になります。
請求書には、工事名、工事内容、工事金額、請求日など、工事の概要が記載されています。
入金通帳には、請求書に記載された工事代金が支払われたことが書かれています。
上記のいずれかの書類を、建設業許可を取得したい業種の工事の実務経験を証明する書類として提出することができます。
これらの書類は、原則としては、注文者や発注者の契約印が押してある必要があります。
書類の作成日や金額などの内容は、建設業許可を取得したい業種の工事の実務経験を証明するものであることを、客観的に確認できなければなりません。
建設業許可の種類によって、実務経験を証明する書類の種類が異なります。
実務経験を証明する書類を準備する場合は、次の点を確認します。
工事名、工事内容、工期、工事金額、請負代金、契約日、発注日、請求日、入金日など、工事の概要を明確に記載したものであること。
工事の請負人または発注人から提出されたものであること。
工事の実務経験を証明するものであること。
学歴と実務経験
専任技術者の要件として、取得したい建設業許可の業種の対象の資格を持っていなければ、一定期間の実務経験が必要になります。学歴との関係は次のとおりです。
大学卒業+3年以上の実務経験
高等専門学校卒業+3年以上の実務経験
専門学校卒業(高度専門士、専門士)+3年以上の実務経験
専門学校卒業(上記以外)+5年以上の実務経験
高等学校等卒業+5年以上の実務経験
指定学科
土木工事業、舗装工事業:土木工学(農業土木、鉱山土木、森林土木、砂防、治山、緑地又は造園に関する学科を含む)都市工学、衛生工学、または交通工学に関する学科
築工事業、大工工事業、ガラス工事業、内装仕上げ工事業:建築学、または都市工学に関する学科
左官工事業、とび・土工工事業、石工事業、屋根工事業、タイル・れんが・ブロック工事業、塗装工事業、解体工事業:土木工学、または建築学に関する学科
電気工事業、電気通信工事業:電気工学、または電気通信工学に関する学科
管工事業、水道設備工事業、清掃施設工事業:土木工学、建築学、機械工学、都市工学、または衛生工学に関する学科
鋼構造物工事業、鉄筋工事業:土木工学、建築学又は機械工学に関する学科
しゅんせつ工事業:土木工学、または機械工学に関する学科
板金工事業:建築学、または機械工学に関する学科
防水工事業:土木工学、または建築学に関する学科
機械器具設置工事業、消防施設工事業:建築学、機械工学、または電気工学に関する学科
熱絶縁工事業:土木工学、建築学、または機械工学に関する学科
造園工事業:土木工学、建築学、都市工学、または林学に関する学科
さく井工事業:土木工学、鉱山学、機械工学、または衛生工学に関する学科
建具工事業:建築学、または機械工学に関する学科