不動産の賃貸、販売、仲介などをしている不動産会社も建設業許可を取得すればメリットがたくさんあります。
賃貸物件の入居者の退去後の原状回復工事やリフォーム工事、修繕工事を不動産会社が自らで施工することができます。
施工する原状回復工事やリフォーム工事、修繕工事が500万円以上であれば、建設業許可の取得は必要になります。
マンションであれば、専有部で500万円以上の工事はなかなかありませんが、共有部であれば、500万円以上もありますし、戸建てであればかなりあります。
リフォームがメインであれば、内装工事の建設業許可がおすすめです。
もし、建築士が在籍していれば、経営業務管理責任者の5年もしくは6年の経験を証明できれば、建設業許可を取得することができます。
経営業務管理責任者
経営業務管理責任者は、建設業許可を取得するために必要な要件です。
経営業務管理責任者とは、営業所において営業取引上、対外的に責任を有する地位にあって、建設業の経営業務について、総合的に管理して執行した経験を有する者のことです。
経営業務管理責任者の要件は、次の2つになります。
常勤性
経営業務管理責任者は、建設業などの営業所において、常勤で経営業務に従事する必要があります。
常勤とは、原則として週3日以上、1日8時間以上、365日のうち220日以上、営業所において勤務することとされています。
経営業務の経験
経営業務管理責任者には、次のいずれかの経験が必要です。
・許可を受けようとする建設業と異なる建設業に係る経営業務の経験が7年以上
・許可を受けようとする建設業に係る経営業務の経験が5年以上
経営業務の経験は、財務管理、労務管理、業務運営などの建設業の経営業務について、取締役会、または代表取締役から具体的な権限委譲を受けて執行した経験のことです。
具体的に次のどれかに該当する経験です。
・取締役、執行役、監査役
・支店長、営業所長、工事部長、経理部長、労務部長等の役員、または役員などの職制上直下にある管理職
令和2年10月より、経営業務の経験の要件が緩和されて、以前は、許可を受けようとする建設業と同じ建設業の経営業務の経験が7年以上必要でしたが、現在は5年以上に緩和されています。
経営業務管理責任者の要件を満たすには、次の書類を添えて、都道府県知事などに届け出ることになります。
・経営業務管理責任者に関する宣誓書
・経営業務管理責任者の経歴書
・経営業務管理責任者の資格証明書
・経営業務管理責任者の常勤性の証明書
経営業務管理責任者の要件を満たすためには、一定の経営経験と能力が必要です。
経営業務管理責任者の要件を証明するには、申請会社の役員であることを前提にすれば、法人の取締役としての5年以上の期間とその期間中の工事経験を証明しなければなりません。
申請会社の役員であることは、健康保険被保険者証の事業所名の記載と会社の履歴事項全部証明書の2点で証明します。
建設業許可を取得するための経営業務管理責任者の要件を満たすには、申請会社の常勤取締役であるだけでなく、その取締役に法人の取締役としての経験もしくは個人事業主としての経験が5年以上なければなりません。
自社で、原状回復工事やリフォーム工事を行う不動産会社であれば、内装工事・リフォーム工事の実績が、豊富にあります。
内装工事の請求書、上記請求に対する入金が確認できる入金通帳を5年分以上あれば、問題ありません。工事の実績で建設業を経営していたことを証明していくことができます。
専任技術者
専任技術者は、建設業許可を受ける建設業の種類に応じて、次のいずれかの要件を満たす必要があります。
国家資格など
次の国家資格などを保有していれば、専任技術者として認められます。
・一級建築士(二級)
・一級土木施工管理技士(二級)
・一級建築施工管理技士(二級)
・一級電気工事施工管理技士(二級)
・一級管工事施工管理技士(二級)
・一級内装仕上工事施工管理技士(二級)
・一級造園施工管理技士(二級)
・一級舗装工事施工管理技士(二級)
・一級とび・足場工事施工管理技士(二級)
・一級鉄筋工事施工管理技士(二級)
・一級コンクリート工事施工管理技士(二級)
・一級建具工事施工管理技士(二級)
・一級木造建築工事施工管理技士(二級)
指定学科を卒業し、学歴に応じた実務経験を有する者
次の指定学科を卒業して、学歴に応じた実務経験があれば、専任技術者として認められます。
・大学:建築学科、土木工学科、建築工学科、電気工学科など
・専門学校:建築科、土木科、建築施工科、電気工事科など
学歴と実務経験の要件は、次のとおりです。
・大学卒業後3年の実務経験
・専門学校卒業後5年の実務経験
・専門学校卒業後3年の実務経験に加えて専門士か高度専門士の称号
許可を受けようとする建設業に係る建設工事で10年以上実務経験を有する者
指定学科を卒業していなくても、許可を受けようとする建設業に係る建設工事で10年以上実務経験があれば、専任技術者として認められます。
経営業務管理責任者は社長で、専任技術者は資格を持っている社員というように、経営業務管理責任者と専任技術者が別の人であるという場合が多いのですが、経営業務管理責任者と専任技術者は、同一人物でも構いません。例えば、社長が両方を兼ねていても問題ありません。
社員の中に建築士の資格を持っている方がいれば、その人が、「内装工事」「建築工事」の専任技術者の要件を満たすことで問題はありません。
専任技術者の持っている国家資格によって、取得できる建設業許可の種類が変わってきます。
電気工事施工管理技士であれば、電気工事の専任技術者になることはできますが、内装工事の専任技術者になることはできません。
原状回復工事やリフォーム工事を手掛ける不動産会社であれば1級建築士の資格があれば、
建築工事、大工工事、屋根工事、タイル工事、鋼構造物工事、内装工事の6業種の建設業許可を取得することができます。
建設業許可を取得する場合の財産的要件
法人の場合、500万円以上の預金残高証明書の原本の提出を求めらます。
決算で、純資産が500万円を下回っている場合には、預金残高証明書が必要です。金融機関などで、預金残高証明書を発行してもらいます。
不動産会社が建設業許可を取得すれば、不動産所有者である家主からのリフォーム依頼や原状回復工事の依頼を、他社に請け負わせることなく自社で実施することができます。
建設業許可を取得する場合の財産的要件は、次のとおりです。
一般建設業
自己資本が500万円以上あること
500万円以上の資金調達能力があること
自己資本とは、貸借対照表の純資産の部にある純資産合計のことをいいます。資本金と剰余金の合計額になります。
500万円以上の資金調達能力があるかどうかは、次のいずれかの方法で証明できます。
・金融機関の融資証明書
・預貯金通帳の残高証明書
・不動産の登記簿謄本