浄化槽は主に下水道が普及していない地域の家庭や事務所等に設置される汚水浄化装置で、その特殊性や水質汚濁防止の観点から、浄化槽本体(形式)・工事・維持管理・保守点検・清掃それぞれに許認可が存在します。また、設置自体は汲み取り式からの転換や入れ替えを除いて、建築確認が必要になります。
法律こそ建築確認を除いては浄化槽法と1つにまとまっていますが、国土交通省と環境省と、管轄省庁が複数あるのも特徴です。(よって省令探しはかなり大変です…)さらには、保守点検については各都道府県の条例で制定されるので、細かくルールが変わります。
そのすべてを解説するにはとてもボリュームが大きいことから、この項では浄化槽工事業に絞って解説します。
浄化槽工事業とは
浄化槽工事は、浄化槽の設置、またはその構造や規模の変更をする工事です。浄化槽の入替え工事も含まれます。
「施工に技術力が求められる一方、請負金額が500万円未満の工事が大半を占める」ことから、請負金額の大小にかかわらず浄化槽工事業を登録(もしくは届出)した者が施工することとされています。
また、その施工管理・監督は国家資格である浄化槽設備士が行うこととされています。
浄化槽工事業の登録と届出(3つのポイント)
POINT1
浄化槽工事業の手続きには「登録」と「届出」の2種類の方法があります。
POINT2
登録・届出は、工事の区域を管轄するすべての都道府県ごとに、各知事あてに行います。
建設業のような「大臣登録」はありません。
よって、たとえば「関東一都六県で浄化槽工事を行いたい場合は、一都六県すべてに登録・届出を行う」必要があります。
POINT3
浄化槽工事業の要件は、以下の通りです。
浄化槽設備士について
営業所ごとに浄化槽設備士が1名以上在籍必要なのが浄化槽工事業ですが、浄化槽設備士は公益財団法人日本環境整備教育センターが実施する国家試験です。誰でも受験できるわけではなく、管工事施工管理技士の2次試験合格者を除き、一定の実務経験が前提となります。
詳細は、試験のご案内をご参照ください。

浄化槽設備士の実務経験は「浄化槽の設置、またはその構造や規模の変更」に限られていますが、補修は主に構造上の不具合の修理であることから、構造の変更として実務経験に含まれると解されています。
浄化槽設備士は、死亡・退職の他、転勤で所属が変わった場合も変更届が必要となり、営業所内に浄化槽設備士が不在になった場合は2週間以内に適切な措置を行う義務があるため、浄化槽工事業運営のためには試験合格でマンパワーを増やすことがカギとなります。
帳簿の作成・保管義務
浄化槽工事業は、登録・届出にかかわらず、帳簿の作成・営業年度終了後5年間の保管義務があります。
帳簿は様式規定があり、書式を崩すことができません。
イメージとしては、案件ごとの表紙が「帳簿」で、その後ろに以下の資料を添付資料として付属させます。(資料の部分は浄化槽メーカーが用意する場合が多いです)
- 処理方式及び処理能力を記載した書面
- 構造図
- 仕様書
- 処理工程図
浄化槽工事業の登録や届出の必要がない場合
土木工事、建築工事および管工事の建設工事を請負った場合で、なおかつその工事が浄化槽工事を含む場合でも、その浄化槽工事を下請けさせる場合は、土木工事、建築工事や管工事の建設工事を請負った者は、浄化槽工事の登録と届出をする必要はありません。(もちろん、下請企業に浄化槽工事業の登録・届出は必要です)